信じるという水をやる

清風寺〈令和5年10月『今月のことば』〉「信じるという水をやる」

 大相撲第七十代横綱・日馬富士〔はるまふじ〕をご存知な方は多いことでしょう。

 あの出来事から横綱の人生は大きく変わりました。

 一切の言い訳もせず角界を去った日馬富士氏。その心に残ったものは、全ての人に対する「感謝」の想いだけでした。

 お世話になった人々にご恩返しをしたい、何かのお役に立ちたいとの思いを持ち続けていたのです。

 まるで今は忘れられた古き良き日本人の心に触れたように感じてしまいます。

 彼は日本の素晴らしさ、伝統を愛しました。日本を我が父と言い、モンゴルを我が母と言い、誰よりも敬意を示し、思いを募らせ過ごしたのです。

 そして日馬富士氏は現在、日本とモンゴルの架け橋となり、モンゴルの子供達に日本の教育、伝統の素晴らしさを伝える活動に力を注いでいます。

 彼は元来、人として恩に報いることの大事をご両親からしっかりと教えられ育ちました。その精神を持って、大相撲で活躍し、様々な出来事を経て、学校作りの活動をすることに自身の恩返しの場所を見つけたのです。

 モンゴルに幼稚園から高等学校までの一貫校を作り、日本とモンゴル、そして世界に羽ばたく子供達を育てていくことが、これまでお世話になった人達への本当の恩返しになると考え、辿り着いた道なのです。

 これまでの縁もあり、9月で5周年を迎えた学校の祝賀会に私も招待いただきました。生徒数一八〇〇名。人気の学校です。この短期間にこれだけ生徒数を増加させた背景には、真心を込めた活動があることは想像に難くありません。

 そして氏はこの祝賀会で、今までお世話になった方々に「感謝状」を贈りました。

清風寺〈令和5年10月『今月のことば』〉「信じるという水をやる」

 微力ながらもお手伝いをさせていただいた私にまで感謝状をいただきました。

 氏は

「諦めないという土に種をまき、信じるという水をやる。希望という芽が伸びて、夢という花が咲く」

と言います。私たちに通じるものを強く感じます。この言葉が、コロナ禍から立ち上がる私たちへのメッセージに聞こえてならないのです。

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