臨終に寄り添う

清風寺〈令和6年1月『今月のことば』〉「臨終に寄り添う」

 昨年末、生駒別院所属のTさんのご主人が、およそ5年にわたる闘病生活の末、最後は眠るように帰寂されました。

 Tさん一家は元々大阪生野区林寺の圓妙寺所属でした。しかし住まいが生駒であるため、大阪へのお参詣が難しい状況にありました。この度、ご主人の「當病平癒」の祈願参詣のため、生駒別院なら自宅から自転車で30分の距離だからと転寺を望まれました。

 ご主人はもうその時すでに癌、内臓疾患、脳梗塞やその他難病等も患っておられました。医師の手の施しようがなく、諦めてしまいかねない状態だったのです。これまでは苦しむご主人をただ見守り続けるだけの日々で、どうしてあげることもできない状況が続いていました。

 しかしTさんは、この転寺をきっかけに、どんなことがあってもご主人のために毎日祈願参詣に励むと決定されたのです。

 異常気象の猛暑でも、台風でも、コロナ禍にあっても、この2年半、1日も欠かさずお寺参詣に励みました。辛く苦しい日も、途中で挫折しそうな時もあったかもしれません。Tさんはそんな中でも

「1日でも多く生きて、少しでも楽になってもらいたい」

との思いでご祈願に励みました。

 朝一番から最後まで参詣した後、療養施設に向かいご主人の看病をする毎日が続きました。

 するとご主人は落ち着き始め、薄紙を剝ぐようように少しずつ安定していったのです。この現証にTさんや家族が随喜し、どうか治らない病ならせめてお父さんを苦しめないであげてほしいと祈り続けたのです。

 この思いが御宝前に通じたのでしょう、ご主人はどんどん安定し始めたのです。Tさんは

「今は主人が安らかになって、1日でも一緒に居ることが私たち家族の望みです」

と語りました。

 ご主人が2年半の増益寿命のお計らいを頂戴したその背景には、Tさんの筆舌に尽くしがたい頑張りがあったのです。入院費もかさむ中、移動手段はどこに行くにも自転車を使い、食費も切り詰めての生活でした。

 その中でも精一杯のご有志に励まれました。そのようにTさんと家族が真摯に御宝前と向き合い、お縋りした功徳によって、最期は当宗の御題目で、本当に立派で素晴らしい葬儀で送ってあげることができたのです。

 1月7日、生駒別院初総講後、私がご主人の二七日忌法要を勤めさせていただいた時には、法要後、Tさんと共に息子さんが御礼のご挨拶に来てくださいました。別院ご信者一同もこの高橋家のご信心に随喜し信心増進しています。こんなにも家族に寄り添われたご主人が何より喜んでおられることでしょう。

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