甲信越地方に伝わる、とある昔話がある。
その昔、ある村に『湊屋〔みなとや〕』という老舗の商屋があった。どうも近頃儲からない。
老夫婦は、あるアイデアを思いついた。
米や味噌などを買ったり売ったりする時に使う計量枡〔ます〕に、ほんの少し大きいものと小さいものを作り、大きい枡を「買い枡」として仕入れる時に、小さい枡を「売り枡」として売る時に使う事にしたのだ。
量をごまして少しずつ儲かり始めたが、すぐに悪い噂が広がり、店は余計に傾いてしまった。
そんな時、この店のグータラ息子の嫁が、この枡をまったく逆にして使う事を提案した。
仕入れる時には小さい枡を使って仕入先を儲けさせ、売る時には大きい枡を使ってお客に得をさせることにしたのである。
すると良い噂がすぐに広まり、あっという間に湊屋の商売は持ち直したのだった。
ご信心の世界でも、法華経の為に、御題目で人をお救いするご弘通の為に我が身命財をひたすら捧げ続ける
「ギブアンドギブ」の精神
が大切だ。
見返りを期待しなくとも、ご利益は後からいくらでもついてくるのである。