目の前の一人の信者を一人前に育てる重要性には2つ理由ある。
1つは、その人は生涯かけて数十人、数百人を教化してくれる可能性があるからだ。
イギリスの人類学者・進化心理学者であるロビン・ダンバー教授によると、霊長類の脳の大きさと社会集団の規模との相関を分析した結果、人間は安定した対人関係を約150人維持できるという。
熱心なご信者ならば、その150人とお茶や食事をした際に自分が毎日行くお寺の話、ご利益をいただいた経験などについて話すはずだ。つまり世間一般の立場にある1人の信者は、150人を教化する可能性を秘めているということだ。
2つ目の理由は、御弘通=お寺の発展はこの「膝をつき合わせた一対一の菩薩行の連続でしかない」からだ。
大多数の寺院が悩むご奉公者・参詣数・護法会減少などの問題は、この地道で泥臭いご奉公の連続でしか解決できないのだ。
一人のご信心が、その先の大勢の人に広がっていく可能性があることを忘れなければ、お互いは目の前の教化子、家族一人ひとりを親切丁寧に育成・法灯相続できるはずだ。